ホーム > ものづくりマイスター制度 > 技能伝承・ITを活用した生産性向上に取り組む企業の好事例発表及び意見交換 発表主旨

平成29年度技能伝承に取り組む企業の好事例発表及び意見交換会について

ITを活用した生産性向上の取組みを実施する企業の好事例発表及び意見 交換会と同時開催

1.日時 平成29年10月25日(水)15:30~17:10

2.会場 奈良サテライトオフィス35 生駒郡三郷町立野南2-10-17

3.参加者
  好事例発表企業
  【技能伝承】

株式会社一ノ坪製作所 代表取締役社長 一ノ坪 英二 氏
  【IT】
株式会社ブルーオーキッドコンサルティング 取締役  野村 陽子  氏
  意見交換会参加企業
梅乃宿酒造株式会社 戦略推進部 部長 福山 和子 氏
吉岡印刷株式会社 総務部   西川 ゆかり 氏
株式会社アジア・ユナイテッド・コンピューティング 代表取締役  正木 茂 氏
  有識者
大阪市立大学大学院 教授   下﨑 千代子 氏

聴講者  13社 13名


4.技能伝承に取り組む企業の好事例発表
好事例発表  株式会社一ノ坪製作所 代表取締役社長 一ノ坪 英二 様

 まず最初に、一ノ坪製作所 代表取締役社長の一ノ坪英二氏から事例発表をして頂きました。氏は三代目であり、一ノ坪製作所は主にシステムデスクやディスプレイスタンドなどスチール製品の製造を行っているとの会社説明および自己紹介がありました。

顧客へのOEM商品の提供および顧客の要望に応じたオリジナル商品の開発、設計、製造、出荷までのワンストップ受注を可能としている。
技能伝承に向けて「ものづくりマイスター」の社員を確保し、若手社員の教育に力を入れており、パソコン活用による社内勉強会などを実施している。 製造ノウハウを蓄積する目的として、作業指図書の図面と検査証の一体化や、設計データや品質データの文書管理ソフトへの取り込み、作業マニュアルの充実を図っている。
作業改善や品質改善の連絡書には改善効果の金額を明記して、効果が直ぐに分かるように工夫しているとのお話しがありました。



5.ITを活用した生産性向上の取組みを実施する企業の好事例発表
 好事例発表  株式会社ブルーオーキッドコンサルティング  取締役 野村 陽子 様

 株式会社ブルーオーキッドコンサルティングは、WEBやクラウドコンピューティング等、インターネット関連のコンサルティング業務を行っている会社であり、中小企業および 個人事業者のIT化支援に携わっておられます。
奈良で数十社のコンサルティングを行っているIT関連について、その動向およびメリットを事例をもとに話しをして頂きました。
まず、なぜIT化が必要か?との観点からお話しを頂き、今後ますます進む人口減少社会に対する企業の課題として、生産性の向上が必要であり、ITを活用して労働コストを下げ、スピードアップを図ることは必須であるとの説明があった。
社会の変化として、スマートフォンの急激な伸びや、通信技術、サービス、端末が共に発展してきており、クラウドコンピューティングの拡大と共にサーバーの自社購入から、クラウド活用へと移行している。
クラウド活用により、初期投資が少なくてもIT環境を構築することが可能となり、常に新しいサービスを利用できるメリットがある。 また、クラウドサービス利用により一社当たり1.3倍の労働生産性となる(通信利用動向調査)とのお話しがあった。

取り扱った事例として、
事例1:サービス業にてグループウェアを活用することにより、ファイルの同時編集や外出先からデータ入力、報告書入力を可能とした。これにより共有ファイルの編集時間待ちや夕方帰社する手間を省き残業時間を削減することが出来た
事例2:スクール運営業にて顧客がWEB上で入力した登録情報をそのまま管理簿に反映出来るよう改善したことにより、顧客情報の入力作業が不要となった
事例3:製造業にて社内SNSでデータ共有を実現したことにより、データの一括管理とデータ有効利用やデータ検索が向上した  などを紹介していただいた。



6.意見交換(パネルディスカッション)
 下﨑教授の取り纏めにより、各社の技能伝承およびIT活用について意見交換会参加企業から発言していただいた。

まず、吉岡印刷株式会社の西川氏より、我が社ではパソコン上において工程管理を行っており、作業の進捗状況の把握や日程調整などの管理業務が向上してきた。また、コスト管理もパソコン上で実現している。これらは生産管理チームが管理運営を行っており、自分もこの一員となっている。パソコンの使用頻度が上がり、パソコンに向かう仕事が増える事により人と人とのコミュニケーションが希薄にならないように、コミュニケーションのバランスを取り、チームワークを築く事が大切だと感じている。

次に梅乃宿酒造株式会社の福山氏より、酒造ということから古いイメージがある。商品のアイテム数が多く、PB(プライベートブランド)商品もある。製法は古くからいる人の記憶に頼っていた。また紙ベースで企画書を作成していたため、紛失したり内容変更への対応に手間がかかっていた。そこでこれらをデータベース化して管理する事により、最新データが見れるようになり業務の効率化が図れた。また12月の出荷が他月の3倍あり人手の確保が大変である。そこで商品をあらかじめ運送会社に発送しておき、クラウドを通じてネットで運送会社へ発注依頼を行うシステムを開発、運用することにより、発送業務と商品管理の簡素化を図っている。

株式会社アジア・ユナイテッド・コンピューティング 正木氏より、ホームページの活用により企業の顧客満足度を高めて、業績アップを図ることが可能となる。IT化はクラウドインフラの活用とデータベース化の双方向から進めることが出来るとの意見をいただいた。

聴講者からの質問「企業がIT化を進める上での課題は何があるか?」
・導入後の管理者の運用スキルが課題であり、継続して使い続ける事が重要である
・紙の資料をデータ入力する必要があるが、データ入力会社やOCR入力を活用できる
・情報漏洩、セキュリティの心配があるが、現行での問題点を考慮すると、会社にデータを置くより、大手データベースの方が
 安心、安全と言える。



7.全体総括(有識者まとめ)
 技能伝承とIT化について事例発表と意見交換を進めてまいりました。IT化を進める上でのハード的な課題についてはクラウド環境や端末の技術進歩により解決策があるように感じています。しかしながら、IT化を推進するシステム管理者の人員配置やスキルアップ、運用ルールなどのソフト的な課題は継続的に取り組んでいく必要があると思われます。

 また、IT化によってメールでの報告、連絡、相談や、マニュアルによる業務推進がコミュニケーション不足を引き起こす懸念があり、IT化のメリットを最大限に利用しながら、デメリットを最小化する工夫が必要と考えます。

 技能伝承は情報の伝承でもあり、ITによるノウハウ集や手順書のデータベース化、画像や動画のデータベース化により技能伝承の一役を担えると考えられますので、各社の事業内容に応じた取り組みにより益々ご発展されることを願います。
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